一般的に最も馴染みのある素材です。充分に乾燥させることはもちろんですが、木も生き物ですから加工してからも暴れてくる(狂いが生じる)こともあります。特に挽き物などは大まかに削り形を整えてから、再度乾燥させ暴れを出してから加工を始めます。
板を組み立て箱状にしたもの。重箱や硯(すずり)箱、大きな物では机や箪笥(たんす)などもそうです。
使われる木材の種類は多く、産地の近辺で産出する木材を使うことも多いのですが、銘木と呼ばれる杢目(もくめ)の美しい輸入材も使われます。
代表的な材は檜(ひのき)、ヒバ、杉、朴(ほお)欅(けやき)、栃(とち)桑(くわ)などです
珍しい杢目の美しさをそのまま見せる場合は、拭き漆が行われます。珍重される材は黒檀(こくたん)、紫檀(したん)、黒柿、などがあります。
江戸指物などに代表される手の込んだ指物は、板同士を組合せる継ぎ方も幾通りもあり、外観からは直線に見えてもその裏で複雑な組継ぎをしているものなどは、年月を経ても狂いのこない木材の性質を上手に利用した方法が採られています |
お椀などに代表される轆轤(ろくろ)で成形したもの
お椀やお盆の形から丸物とも呼ばれます。
お椀のように蓋(ふた)がついたり客数分に寸法を揃える必要のあるものは、あらかじめ挽くための定規を作り、同じ大きさと形に整えるのです。
主な材は、欅(けやき)、栃(とち)、みずめ桜、桂(かつら)などです |
厚い板を鑿(のみ)で彫って成形したもの
轆轤(ろくろ)では真円となり、板物では直線が基本となります。自在な曲線を持った成形に用いられます。
昔は手で加工するしかなかったのですが、現在は工作機械(三次元ルーターマシン等)で自由な成形も可能です
主な材は、手で彫り易い比較的硬さの少ない朴(ほお)や桂(かつら)が使われます
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曲げ輪ッぱに見られる薄板の曲げ加工
秋田や木曾などが有名な産地としてあります
板を曲げる方法は、薄板をお湯に浸けて柔らかくなったところで成形し型で押さえて乾燥させる方法と、板に曲げる面に浅い溝をつけ成形する方法があります。
代表的な材は檜(ひのき)、杉、サワラで、正目で節の無い部分を用います
通常、釘で止めたりはせず桜の皮で縛る様にしてとめています |
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竹を割り竹ひごを編んだものに漆を塗ったものを藍体(らんたい)漆器と言います
この方法も遺跡の発掘で発見されていますから、古くから行われていたことがうかがわれます
竹と漆の組合せは、伝統的なところで現代でも使われています。雅楽の「笙(しょう)」やつり竿がこれに当たります。
ガラスの茶碗に藍体の茶托が組み合わされているのが、夏場には良く見かけます。漆の肌はやさしい、暖かいと表現されますが、夏の盛りには暑苦しいということです。透明で涼しげなガラスとの取り合せが漆をすがすがしいものにしています。
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木型に和紙を貼り重ね、柿渋や漆を塗り固めたもの
江戸時代に飛来一閑が始めたと言われ、この名が有るとされます
木型からはずし漆を塗り重ねた一閑貼りは、たいへん軽く丈夫です。また木型の形しだいで自由な成形ができるので、他の素地では難しい形を簡単作成できます。
大正時代から昭和初期にかけて、新聞紙を使い針箱が盛んに作られた記録が残っています。
紙の繊維を固めて乾漆(かんしつ)を作ることも出来ます
牛乳パックで葉書を漉(す)くホビーがありますが、同様に乾漆の素地製作が可能です。お子様でも出来ると思います。
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陶磁器の表面に漆を塗ったもの
釉薬(うわぐすり)をかけた表面は漆の食い付きが良くないため無釉で素地にします。漆が表面に染み込んでいくため、しっかりと付着していきます。一度表面に食いつけば、後の工程は問題ありません。
陶磁器が破損した場合、金継ぎ(きんつぎ)で修理するのは知られるところですが、これは糊漆で接着し継ぎ目を金で蒔くことからこう呼ばれます
木材よりも自由な成形が可能ですが、重たくなる・壊れ易いなどの欠点もあり、あまり一般的ではありません。
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金属を成形し漆を塗ったもの
漆は金属への付着力は弱いため、付着力を高めるために、一般的に焼付けが行われています
岩手県の南部鉄器は鋳物ですが、まだ熱い内に型からはずし漆を塗りつけます。鉄が熱い間に塗るため焼き付けと同じ効果が得られます。
金属の中でも漆の付着がし易いものとしにくいものとがあります。相性の良い金属としては鉄、銅そして蒔絵の素材でもある金、銀、錫などがあります。
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なめした皮を芯に漆を塗ったもの
奈良時代には盛んだった様ですが平安時代以降はあまり見られません。切れ味の良い刃物と轆轤(ろくろ)技術が発達してくると、こちらの方法が量産技術として優れており、木材が主流になったからではと思われます。
現在では山梨県で甲州印伝(こうしゅういんでん)と呼ばれる鹿皮に漆をのせて文様を描いたものがあります。財布や袋物などがあり手触りのやさしい優れたものです。「甲州印伝」で検索してみてください
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麻布(あさぬの)を芯に下地で堅め素地にします。
技法としては二種類あり、木心乾漆と脱活乾漆とがあります。木や粘土で成形した芯材の上に刻苧と麻布を交互に貼り重ね、形を整えます。この素地に漆塗りをします。
木心法は、芯材を中にいれたままにします。
脱活法は漆が乾燥してから内部の芯を取り除き仕上げを行います。代表的なものは奈良時代から仏像や器がこの技法で作られています。
特に仏像の様に大きく複雑な成形が必要な場合には、欠かせない技法です。
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ガラスや合成樹脂(プラスチック)等を素地としたもの
お椀などでは木材を素地に使用すると、品質にバラツキが生じやすいことと乾燥させるために時間がかなり必要なため、ひところの安価な大量生産品はプラスチックが主流でした
木材のバラツキとは、自然物ですから同じ材木からとった木地でも採った部分により木目も違えば、堅さ等も均質では有りません。素材に合わせた加工が要求され、これが職人技ともなるのです。
近頃ではプラスチックは減ってきています。これは樹脂成形に必要な金型にコストが掛かるためで同じものを大量に作らなければ安価にはならないためです。あらゆる商品が多品種少量生産の時代ですから沢山の金型を用意するのが不可能となったのです
ガラスは漆が付着しにくいものの一つです。
焼付けが必要なことはもちろんですが、ガラス表面をカップリング材で表面処理する方法と、付着力を高める添加物を加える方法が採られています。
漆の良い点を出すためには表面処理をした後、純粋な漆(混ぜものが入らない)を塗る方法が良いと思います。
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