21世紀の漆を考える

21世紀の漆を考える

天然素材うるし

コンセプト
天然うるしとは?
・うるしの木について
・生うるしについて
・うるし液の種類
本物とにせもの
うるし製品の価格
・生産のコスト
・流通のコスト
・社会的コスト
漆器のつくりかた
・漆液の生産と精製
・素地のつくりかた
・うるしの塗装方法
・加飾のうるし技法
・塗装工程の実際
・塗りに失敗すると
うるしは4K ?
うるしの科学
・科学(入門篇)
・少々専門的
漆は英語でjapan
漆器の主要な産地
うるしの雑学
根来椀の復元
・根来塗りとは
・実際の制作過程
・その他の試作品
イージーオーダー
・オーダー対象一覧
・パッケージについて
・対象製品 一覧
宝尽くしの加飾
家紋の加飾
扱う色について
特定商取引法に基く表示
漆製品のお手入れ方法
牛乳パックでつくる器
新 着 情 報
うるしの文献
リ ン ク

天然うるしとは?

天然うるしの良さとは、樹木の樹液を原料として使用しているため環境にやさしく、美しいその肌にあるようです
樹液の採取を漆を掻くと呼び、その樹液が肌につくとかぶれを起こします
かぶれは良さではありませんでした。!
先ずは、天然漆の解説になりますが科学のページもご参照いただくと更にご理解いただけます
うるしのecoひいきをご覧ください



天然うるしとは

漆は漆の木の樹液です。漆の木を植えれば約10年後には樹液を採る事が出来る大きさに育ちます。5千年前の縄文時代から塗料・接着剤として利用されてきました。

ライフサイクル・アセスメント即ち環境問題を考える上で、枯渇する事無く原材料から生産そして使用後の廃棄まで、この地球環境に負荷を与えることが少ない素材である事。そして木を育てていけば永遠に生産可能な素材なのです

樹液の採取・精製加工そして塗装してからの乾燥の段階で化学物質は必要無く、エネルギー消費も殆どありません(精製加工で加熱が行われます)従って、有害な産業廃棄物を排出することもなく、内分泌撹乱性化学物質(環境ホルモン)とも無縁です。

漆の塗膜は酸や熱に耐性が高く非常に安定した物質であり、縄文時代の遺跡から朽ち果てずに長い年月を過ごし、出土品として発掘されています。(化石は別として、通常の物質は腐敗や分解が進み土に戻ります)従来は漆の欠点と云われてきた「紫外線に弱い」という点も土に返るためには必要な機能なのです。自然はすぐれた天才です
日差しが強くなってくると、この紫外線は嫌われますが必ずしも悪役ではありません
確かに人間も肌に紫外線を浴びると活性酸素の働きでシミやソバカスの原因となることが知られていますが


漆の樹液の性質は一定したものではありません。工業生産された塗料の様に品質が安定している訳ではないのです。同じ一本の木から採った場合でも時期により成分・性質が変わります。当然生育環境の異なる地域、また同じ地域でも標高が変わると性質が変わります。更に厳密に云えば天候の状態や朝昼夕の時間帯でも変化する様です。相手が生物ですからいた仕方ありません。こんな理由から国内産と輸入物と単純に区分して、優劣を議論しても現実的では有りません。


樹液は一度に掻き採れる量はあまり多くなく、これも個体差や時期、掻き採り方で差があるため、少なくとも、一掻き当り、おおよそ耳掻きに一杯くらいからスプーン一杯位まででしょうか。品質の違いは、採取した樹液の混合と保存、精製加工で変わってしまいます。

国内産の良さとはこのプロセスが直接管理でき、用途別に精製出来る為、細かい注文に対応できることだと思います


「良質な漆」について語り合うと、掻き子さん(漆掻きの人)・塗り師さん等立場によって微妙に相違点があるようです。すべての産地を周っていないのですが地域の差(作る最終製品も異なる)もある様です。


やさしい手触りとうつくしい表情をもっている独特な質感は伝統文化として珍重されてきました。


当サイトでは天然漆100%を前提としています。
それは天然漆が独特なメカニズムを持っているからです

したがって加工性を良くするためや、コストダウンを図るため等に増量剤や有害性が懸念される物質、発色を良くするための添加物などを排除した上で物づくりしたいと考えております。(鮮やかな色は望めません)
天然漆のメカニズムは科学のページへ


生漆についてのページを開く

素黒目漆の色見本

生漆(荒味漆)
漆木の樹液についての解説
素黒目漆

うるしの木


Clickすると大きな画像を別画面で表示します
Clickすると大きな画像を別画面で表示します

漆木(山の木) 初夏の漆木の葉

漆の木は東南アジア各地に存在し、漆科の植物は600種(漆科の植物では果物の「マンゴー」も含まれます。)もあると云われ、その中でも樹液が採取出来るのは漆属の数種であり、それぞれにその地域で利用されています。産出国によりその樹液も成分が異なるため固有の製品がつくられています。
中国と日本の木はほとんど変わり有りません。厳密には相違点があるようですが、中国から伝わったという説もあります

うるし木は10m程の高さに成長しますが、3m程のヤマウルシ(同じ漆属)は樹液を掻き採ることはありません

うるしの名称は、潤液(うるしる)・塗汁(ぬるしる)の略と云われます
(牧野 富太郎先生の牧野植物図鑑より)

国内では秋になると黄色(赤もある)に紅葉する里の木として一般的な風景でしたが、漆を掻く人も少なくなり、かぶれることも嫌われあまり目にすることもありません。
*紅葉については赤と黄色の二色があるようで、木の種類も関係するようですが漆掻きさんの話では、掻き採られた木だけ赤くなる場合もあるようです。
【掻き子さんの話】里の木で漆を掻いたものは赤くなり、掻かないものは黄色で、山の木は掻いても黄色なのだそうです。木の種類は変わらないとも。(大ベテランの掻き子さん談)
色の違いがある原因(科学的に)をご存知の方はご一報ください
現在、岩手県が最も植栽が盛んで国内産漆では産出量も一番多く、二戸郡浄法寺町は漆の町として知られています。(このページの漆木画像素材は、殆どを浄法寺にて入手しました)
漆木は比較的成長の早い木で、殺し掻きで切り倒された根はそのまま残され、翌春には切り株から芽が出て育ち始めます。
8〜15年(生育地で相違がある)で樹液の採取が可能となります。
昔は、里に植えられたのは樹液を採取するためではなく漆の実が目的でした。蝋燭(ろうそく)の原料となる木蝋(もくろう)を実から採るためです。


Clickすると大きな画像を表示します Clickすると大きな画像を表示します
うるしの実 うるしの種


現在では漆の蝋燭は見かけませんが、和蝋燭の原料である「はぜの木」は漆科の木なのです。和蝋燭にはぜを使用しているものも少なくなっています。現在、はぜは九州が主な産地です
ひところは会津藩や南部藩(現在の福島県から青森県にかけて)で重要な産品として財政を支えていたようです。南部藩の古文書には漆木の管理をする役人がいたことを示す表記も見られます。

殺し掻きとは


漆の樹液を採取することを「漆を掻く」といいます 掻き方には主に「養生掻き」と「殺し掻き」があります
殺し掻きとは6月頃から11月頃まで何度にも分けて(天候が良ければ4〜8日毎)漆を掻いていくのですが最終的に掻き終わった木は最後に根元から切り倒してしまいます。
殺し掻きとは云え連日木を傷つけることはせず4日おき以上の期間を置きます。一度に傷をつける場所は一定の間隔(地域により掻き方が異なる)をとり傷口が程々の個所で固まるまでは、木を痛めないためです。
約半年の間に表皮のほとんどが掻いた傷痕でいっぱいになってしまい、翌年のために切り倒すのです。

養生掻きは、半年で全て掻き採らず養生するためにこの名があります。 現在の漆掻きは、ほとんど殺し掻きによる方法が一般的です。
物騒な名前ですが、切り倒した翌春には新しい芽が生えてきます。充分に育った根を殺す訳ではないので合理的と言えるのではないでしょうか
あまり古い木では発芽はしないそうです





かぶれについて


乾燥していない漆は「うるしかぶれ」を引き起こします。
このかぶれに有効な治療方法は残念ながらありません。時間が経てば直ります。(軽いかぶれなら一週間位、重いと数ヶ月)
体質による個人差がありますので、過敏な方は気をつけてください
地方により色々な民間療法や、皮膚科の医師が薬を処方してくれますが一時の気休め程度のようです。かなり痒くなりますが掻いてはいけません、我慢するしかないのですが、痛さは我慢もできますがカユミは辛いものです。


外観から漆液の乾燥状態を見分けるのは大変に難しいことです。
一般的に乾燥に必要な時間は常温乾燥の早いもので1日弱(漆液の固体差でかなりの幅がある。数時間〜1週間)ですが、この段階では表面のみの乾燥です。真の部分まですべて乾くまでには1〜6ヶ月(環境と漆の状態で変わる)必要です。 日本全国翌日に商品が届けられる時代ですから、購入した製品が完全に乾燥してない可能性は否定できません。

商品を長い期間寝かせてしまうと運転資金の金利が嵩み、価格にも反映されますから乾燥具合と価格はトレードオフの関係になるのです。伝統工芸品の価格はこの点を考慮する必要があります。

お椀など臭いがするようであれば乾燥しきれていない可能性があります。特に光沢(ツヤ)の有る塗りが施されている場合、油を漆に混ぜてある可能性があります。(JIS規格にもある位、一般的なことで問題ありません)この油の為(空気と触れにくくなる)に乾燥時間が遅くなることもあるようです。





うるしの種類

樹液を漆木から掻いた(採取)状態では、そのまま塗料とすることは出来ません。
詳しくは

木材としての漆
以前は、腐りにくい木材として漁業の網用の「浮き」として利用されていましたが、現在ではプラスチック製に置き換わり「薪(まき)」になる程度の用途しかありません。
切り倒した漆木の色はかなり黄色見の強い木材ですが、年を経る毎に色が抜けていきます。画像の板は製材して約3年経過しています。

Clickすると大きな画像を別画面で表示します
うるしの木材
きれいな木目だと思いませんか?


(C) Copyright 2002 urushi Takahashi. All rights reserved