21世紀の漆を考える

21世紀の漆を考える

天然素材うるし

コンセプト
天然うるしとは?
・うるしの木について
・生うるしについて
・うるし液の種類
本物とにせもの
うるし製品の価格
・生産のコスト
・流通のコスト
・社会的コスト
漆器のつくりかた
・漆液の生産と精製
・素地のつくりかた
・うるしの塗装方法
・加飾のうるし技法
・塗装工程の実際
・塗りに失敗すると
うるしは4K ?
うるしの科学
・科学(入門篇)
・少々専門的
漆は英語でjapan
漆器の主要な産地
うるしの雑学
根来椀の復元
・根来塗りとは
・実際の制作過程
・その他の試作品
イージーオーダー
・オーダー対象一覧
・パッケージについて
・対象製品 一覧
宝尽くしの加飾
家紋の加飾
扱う色について
特定商取引法に基く表示
漆製品のお手入れ方法
牛乳パックでつくる器
新 着 情 報
うるしの文献
リ ン ク

接着剤・塗料としての生産と精製



漆の採取 -漆掻き-
漆を掻く人を掻き子さんと呼び、専門の職業として行われています
木の在る所へ出掛けていって掻き取らなければならないため、遠くまで遠征することもあり孤独な作業です。
漆を掻く期間は地方によって前後しますが、6〜11月頃になります
掻き子さん一人でこの期間に多くて400本程度(山の状況などで、かなり前後する)の木を掻きます
この木の生えているエリアを四等分して区画を決め、一日当たり一区画を作業し五日目に最初の区画に戻る作業を繰り返します
毎日連続で同じ木を掻くと、木を痛めてしまうためと四日程度の間を置かないと樹液が充分に出てこないためと云われます

漆を掻く手順
まず、対象となる木の足場をつくらなければ作業できません
小さな木でも下草を払う必要があり、大きな木で上の方の枝を掻くために足場を組むこともあります

道具一式を腰に着け、木の表皮を剥いでいきます。一尺(30cm)程度の間隔を置いて目立と呼ばれる印を鎌で付けていきます。これは掻いていく間隔を配分するためです
これで掻く準備が出来ました。一ヵ所ごとにうるしを掻いていきます
そして四日たったらその隣の位置を掻いて、これを繰り返していく訳です


漆の種類は樹液を採取した状態の荒味漆、ろ過してゴミ等を取り除いた生漆、更に「なやし」「くろめ」を行った精製漆に大別できます
生漆は、下地つくりなどの使用する目的に合わせ、更に加工がされます

なやし
なやしとは、生漆を攪拌して生漆に含まれる各成分を分散させ、全体を均質な状態にすることを指します
この結果、塗ったときのなじみ流れが良くなり、塗った後の塗膜表面に残る刷毛目の凹凸を無くし肌を良くするための工程です

なやしの方法や時間は、生漆の種類や性質で一定ではありません。一般的には2〜5時間位が目安となりますが生漆の状態を見極めて最適な設定をするのは勿論のことです

くろめ
くろめとは、生漆を攪拌しながら加熱して、生漆に含まれる水分を蒸発させて水分調整することを指します
加熱する熱源は現在ではほとんど行われていませんが太陽熱(直射日光)が古くは利用され、炭火・ガス熱・電熱器・熱風などが使用されます
加熱する温度は必ず45℃以下にしなければなりません。温度が高くなると活性を失い乾燥しない漆になってしまいます。
最終的な含水率は2〜3%になります。この水分が無いと乾燥ができなくなり、水分量で塗り肌にも影響が出てきます

補助材(添加物)
補助材は目的とする漆の種類と用途により混入されます
また、生漆の性質は一定ではないので、補助材を配合して用いられます
補助剤を使用する割合は、生漆に対して多くても、10〜30%程度とされます

補助材の材料としては、乾性油・天然樹脂・水飴・蜂蜜・グリセリン・鉄粉などが用いられます
近頃では、補助材を多量に使用することは行われないようです

黒漆の作り方
一般的に、鉄粉・水酸化鉄・油煙を混入します
これは一例です。うるしやさんによっては他の方法が用いられノウハウでもあります
☆水酸化鉄Fe(OH)2を使用する場合、漆一貫目(3.75kg)に対して
0.6〜0.7%(24g前後)の量を添加します
水酸化鉄を作るためには、硫酸第一鉄FeSO4・7H2Oと炭酸ナトリウムNa2CO3をそれぞれ水に溶き、溶解したら同時に混合し反応させ更に水を加えると沈殿物が生成されます。これを濾過したものが水酸化鉄となります。この水酸化鉄は空気に触れるとすぐに酸化してしまうため、「くろめ」時間とのタイミングが重要です。
くろめが終わりそうなところへ混入し攪拌をすると反応が起こり黒漆が出来あがります


生漆の種類と生漆を使った仲間
生漆の種類
生漆は荒味漆(樹液)をろ過したもの
上摺(うわずり)漆 上質な国内産生漆で,最終的な仕上げに使われます
下地漆 ほとんどが中国産漆で,漆下地用に使われます


生漆を使った漆いろいろ
生漆をベースに下地を作るためのペースト状のものを作ります
そのままでは日保ちしないため必要に応じて自分で作らなくてはなりません。
ラップに包み、空気に触れない様にして冷蔵庫に保管すれば数日間は問題無く利用できます

刻苧 こくそ パテ状のもの
生漆に木粉等を混ぜたもので素地の傷や割れ目などに充填する
下地を作る準備段階に当り、素地の平滑性を確保するために使われます

糊漆 のりうるし パテ状の接着剤
生漆にでん粉糊を半々で混ぜ練り合わせたもの。麦漆とも言う
下地の布着せ、陶磁器の金継ぎなどに用いられる
でん粉糊はご飯粒をつぶしたもの、上新粉を煮て糊にしたもの、更に麦粉を少量まぜたものなど各種の方法がありますが、糊と生漆の割合は、ほぼ半々で変わらない様です

錆漆 さびうるし パテ状のもの
生漆にとの粉を水で練り粘土状にしたものを混ぜたもので、錆漆をヘラで素地に塗ることを錆付けと言い、この下地を錆地と呼びます
この錆漆で書いた絵は錆絵といいます

地漆 じうるし パテ状のもの
生漆に地粉(じのこ)を混ぜ合わせ練ったもの
地の粉は粘土を一度焼いてから砕いて粉にしたもので、
布着せをした場合、布目を潰すために地つけがされます
特に輪島周辺で採れる珪藻土を原料とした地の粉は強固で美しい下地が作れることで知られます

切り粉漆 パテ状のもの
生漆に地の粉、との粉を混ぜ練り合わせたもの
下地の中でも地漆と錆漆の中間使われます

精製漆の種類


精製漆の種類
使用する用途に合わせた精製が行われます
以下のような用途があります
生漆 原料漆液から異物(ゴミ等)を取り除いたもの
梨地漆 梨地仕上げに用いる
透呂色漆 透明度の高い原料を選び、顔料を加え研磨塗に用いる
透艶漆 補助剤を加え、顔料を入れ塗り立てに用いる
透箔下漆 金銀など金属箔をはる下塗りに用いる
透中塗漆 中塗りに用いる
透艶消し漆 透明なツヤ消しに用いる
黒呂色漆 黒色研磨塗りに用いる
黒艶漆 黒色塗り立ての仕上げ塗りに用いる
黒箔下漆 金銀など金属箔をはる下塗りに用いる
黒中塗り漆 中塗りに用いる
黒艶消し漆 黒色ツヤ消しに用いる
精製漆の呼び方は、地域ごとに独特な名称が付けられています
詳しくは、下の地図をクリックしてください
精製漆の呼称

その他


最近では、精製工程であるなやしくろめも機械化が進んできています
よりキメの細かい粒子に精製できるようになりました
安定した品質を得るとともに精製の質も向上してきています

しかし、漆掻きは木の生えている場所へ出掛けていかなければならないためもあり、機械化はされていないのです



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