江戸時代にはハッキリとした分業制度が確立されていたようです。 樹液を採る掻き子さん、掻き子さんから荒味漆を集める仲買、木地ををつくる木地やさん、塗り専門の塗師、蒔絵の蒔絵師さんなど職能毎に専業となっており、 塗師が頭となり采配し、すべての手配が行われていました 現代的な流通システムが登場してからは卸問屋の力が強くなり、消費者に一番近いところにいる百貨店などと商品を選定し産地から買い上げて来るようになりました。 流通との力関係で低価格な普及品の需要が大きくなってきます。生産で大きなコストを占めるのは手間(人件費)ですから、手間をかけずに生産できる素材が増えてくるのです。木地で云えば樹脂成形(いわゆるプラスチック)、うるし100%ですとハケでしか塗れないため、スプレーが使えるように薄めたり、あいまいな酵素の乾燥ではなく有機溶剤の力を使うことになってきた訳です。ここからが問題なのですが、上塗りの下がどうなっているのかは外観からは判別できないことです。 現在は 工程による分業体制が産地内で閉じている訳ではありません。もっとも、昔は木地師も腕一本で材料の在るところへ渡り歩いていたこともあったようですが。 木地は木工加工の得意な産地や樹脂(PET等)成形は工場生産になります。蒔絵師も技法や絵柄で専門化しています。例えば家紋を入れるのが専門であるとか、お位牌に戒名を入れる専門とか大きな産地では分業も徹底しています。 木地の産地と塗りの産地が異なることも珍しくありません。今やあらゆる商品が適地生産(国外を含め)で作られている現在、漆も例外ではないのです。 殆どの工程を国外(中国など)で行い、仕上げとなる上塗りと加飾は国内で行う例もあります。いわゆる原産国表示はどこで線引きするのでしょうか? 一般的な漆器の流通 漆器を何処で購入していますか。専門店・量販店・百貨店・ギャラリー・通販など多くの流通ルートがあります すべてに共通するのは、漆器の現物が用意されていてその場で持ち帰るか、配送を頼むかができることです 在庫があるのは見込み生産をして商品供給をするシステムがあるからです。これが問屋のシステムになるのですが(ギャラリーは別です)、多品種少量の時代となり困難な局面を迎えています 在庫のリスクは、生産者と問屋が負う事になります。売れ残ることを考慮した価格設定をする事になります 特に漆の制作工程は丁寧になるほど時間がかかりますから、注文があっても完成するまで納品できないため早目の見込み生産が必要となります ギャラリーは作家を中心に活動する場ですから事情は少々異なりますが、見込み生産する点では同様です とりわけ、作り手の個性を商品価値に置いている訳で、もの作りでの妥協は排除しているはずです |
百貨店での購入を例に見てみましょう まず、百貨店の商品は大きく分けて二種類あります。一つはプロパーの通常仕入(買取り)で在庫リスクは買取っていますから百貨店にあります。もう一つは消化仕入と呼ばれ売れた時点で仕入を立てる方法(在庫リスクは問屋にあります)です。 リスクを負うところは在庫に関して厳しい目で見ますし、リスク分の粗利を設定(多少売れ残っても損をしない位)します。 百貨店は大変なコストがかかります。一等地に店を構え、人件費を払い、在庫負担も必要です 多くの商品の中から手にとって商品選択できたり、その場で持ち帰れる等、百貨店を利用するメリットもあります 問屋は塗師に商品を発注しますが、買取ることが前提になりますので、慎重になります。しかし大口で商談がまとまり注文することもあります。当然単価は下がりますが量の問題が発生します。素地が間に合えば、塗りは仲間に手伝ってもらえますが、素地が足りない場合、乾燥させる時間を考慮すると新たな木地製作は納期との戦いとなります。 少し横道に外れてしまいましたが、価格の構造は変動要素があるために、仕上がりは見分けがつかなくとも同一価格とは限らないのです。 こんな点が大企業が生産する工業製品と異なります |
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